同級生が挑む!「デザイン×XR」で見えないバリアを打ち破る車椅子視点の疑似体験プロジェクト
Writer / 井上、大庭、鈴木、油利
このポートフォリオサイトでは、私たちデジコンの学生が日々制作している作品や、社会課題に向けたプロジェクトを発信しています。
今回は、私たちのクラスメイトである2年生の4名(井上真翔さん、大庭康希さん、鈴木一功さん、油利隼さん)が長期間にわたって取り組んだ『車椅子UD推進プロジェクト』を特集します!身近な同級生たちが、学校で学んだデジタル技術を使ってどんな社会課題に気づき、どうやって解決しようとしたのか。彼らの制作の裏側と情熱を、学生である私たちの視点からたっぷりとレポートしたいと思います!
こんな人にオススメ!
- デジコンの学生が日々制作している作品が知りたい人
見過ごされがちな「日常のバリア」と想像力の欠如
近年、駅や商業施設をはじめとする様々な公共空間において「UD(ユニバーサルデザイン)」の推進が声高に叫ばれています。
【用語解説:UD(ユニバーサルデザイン)】
年齢、性別、国籍、そして障害の有無などに関わらず、最初から「できるだけすべての人が利用しやすいように」施設や製品、環境をデザインするという考え方のことです。
物理的なバリアフリー化は少しずつ進んでいますが、車椅子利用者が日常的に直面する課題は、依然として多く存在しているのが厳しい現実です。
わずかな段差、すれ違うのがやっとの狭い通路、車椅子の低い視点からは見えづらい案内表示、そして設備情報の圧倒的な不足。健常者として生活している私たち学生にとっては、日々の通学や移動の中で意識すらしない些細な環境の要因かもしれません。
しかし、車椅子利用者にとっては、それが移動を大きく制限し、まるで社会から拒絶されているような心理的・物理的障壁となって立ちはだかります。
今回、プロジェクトチームの4名が着目した最大の課題は、物理的な段差そのものだけではなく「健常者がその困難さを実感する機会が日常に少なすぎる」という社会構造そのものでした。
自分自身が不便さを体験する機会がないからこそ、社会全体での理解や共感が広がらない。この「想像力の欠如」という見えない壁をいかにして可視化し、人々の意識を変革するかが、彼らの大きなテーマとなりました。
解決の糸口としての「XR技術×デザイン表現」
この課題に対して、彼らは授業で学んでいる知識を総動員し、画期的なアプローチを導き出しました。それは、ただ文章で説明したり、第三者視点の啓発映像を作ったりするのではなく、最先端の「XR」と「デザイン表現」を掛け合わせることで、車椅子利用者の視点を「疑似体験(追体験)」できる没入型のコンテンツを制作するというものです。
【用語解説:XR(クロスリアリティ)】
VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、MR(複合現実)といった、現実世界とデジタル空間を融合させて、新しい体験を作り出す技術の総称です。彼らは今回、この中の「VR」を活用しています。
単に危険な場所を外から教えるのではなく、当事者が日々感じている危険や心理的負担をデジタル空間上で可視化し、ユーザー自身に体験してもらう。他者の視点を自分の中にインストールしてもらうことでしか、本当の意味での共感は生まれないと彼らは考えたのです。
試行錯誤の制作プロセス
コンテンツの制作は、大きく3つの実践的なステップで進行していました。傍で見ていた私たちも驚くほどのこだわりが詰まっています。
1. 360度カメラによる「リアルな視点」の記録
まずは、実際の移動ルートにおけるリアルな視点を記録するため、360度すべてを見渡せるカメラを使用して撮影を行いました。学校の備品である車椅子を使用したため撮影エリアは校内に限定されましたが、これがかえって大きな気づきを生んだそうです。
毎日通い慣れている安全なはずの校舎内でも、いざ車椅子の低い視点に切り替わると、エレベーター内での方向転換の難しさや、少し重い引き戸を開ける際の圧倒的な負荷など、健常者の視点では全く気付かなかった数多くの「脅威」が潜んでいました。
2. UIデザインを用いた「危険ポイント」の可視化
撮影した映像に対し、そのまま見せるだけでは危険性が伝わりきりません。そこでチームは「After Effects」というソフトと「モーショングラフィックス」の技術を用いて映像に高度な編集を加えました。段差や狭い通路などの危険ポイントに、警告マークや説明UIを合成。授業で培ったデザインスキルを駆使し、視界のどこに注意を向けるべきかが直感的に理解できるインターフェースを構築したのです。
3. VRによる「圧倒的な没入感」の創出
完成した映像は単なるモニター再生ではなく、「Meta Quest」を使用して視聴できるように設定しました。ヘッドセットを装着することで、体験者は強制的に「車椅子利用者の低い視点」と「空間の狭さ・圧迫感」のど真ん中に放り込まれます。この圧倒的な没入体験の提供こそが、本プロジェクト最大のこだわりでした。
プロジェクトメンバーのリアルな声!
ここで、実際にこのプロジェクトを走り抜けた4人のメンバーから、制作を終えての生の声をもらいました!
井上 真翔さん
「無いものは作る」という信念のもと、車椅子利用者が直面する重い引き戸などの見えない壁をXRで可視化する制作に挑みました。普段気にも留めない扉の重さが、視点が下がるだけでいかに巨大な拒絶の壁になるか。デザインとテクノロジーの力を掛け合わせ、当事者の心理的負担まで疑似体験できるUI表現にこだわりました。この体験が社会の想像力を広げ、思いやりのある環境づくりの一歩になれば嬉しいです。
大庭 康希さん
県での発表という貴重な機会に向けて制作を行いました。4人グループでは意見の食い違いや進行の遅れなどのトラブルもありましたが、自分が中心となり、話し合いの場を設けたり役割を整理したりして全体をまとめることを意識しました。本番の発表は担当していませんが、制作内容の精度を高めることに注力し、土台を作る役割を果たせたと思います。仲間と協力して一つの成果を形にできたことは、大きな自信と学びにつながりました。
鈴木 一功さん
今回、県の予算で実施されたこの貴重なXRプロジェクトに携われたことを大変嬉しく思います。当初「車椅子UD推進」というテーマには正直馴染みがありませんでしたが、未経験だからこそ新しい知識を得る毎日はとても新鮮でした。特に苦労したのが自身初となる360°カメラでの映像制作です。試行錯誤の末に成功させた瞬間は、Webや通常の動画制作では味わえない大きな達成感があり、他では得られない貴重なスキルと自信が身につきました。
油利 隼さん
これまでXR技術に触れる機会がなく最初は不安もありましたが、非常に良い経験となりました。ユニバーサルデザインをテーマにした車椅子視点の体験コンテンツ制作において、学校で学んできた映像編集や撮影の技術を存分に活かすことができ、自分たちのスキルがXRにも通用すると実感しました。他グループの独創的な作品やプレゼンからも刺激を受け、XRが持つ無限の可能性を強く感じる貴重な機会になりました。
クラスメイトから見た、プロジェクトの3つの成果
それぞれの熱い思いを持って制作に取り組んだ彼らの姿は、私たちデジコンの学生全体にとっても大きな刺激になりました。
社会的成果
言葉では伝わりにくいバリアフリーへの理解と共感を、テクノロジーの力で「疑似体験」として直接的に促進する手段を生み出しました。
教育的成果
映像編集やXR、UI表現といった専門スキルを、単なる学校の課題の枠を超えて、実際の社会課題解決へと応用する姿を見せてくれました。
技術的成果
高度なプログラミング知識がなくても、「デザインの力」と「XR」を適切に掛け合わせることで社会貢献に直結するコンテンツを作れるという事実を証明してくれました。クリエイターを目指す私たちにとって、最も勇気づけられる成果です。
今後の展望:彼らの挑戦は続く
プロジェクトとしては一つの区切りとなりますが、彼らの挑戦は終わりません。
現在のコンテンツは映像ベースの「視聴型」ですが、今後はユーザー自身が自由に移動や選択を行える「体験型VR」へとシステムを発展させることを目指しているそうです。また、今回は校内に限定されたシチュエーションも、駅周辺や公共施設などへ拡張し、より実際の社会生活に即した検証を進めていく予定とのこと。
同級生である彼らが「無いものは作る」という情熱をもって社会課題に向き合い、解決策をプロトタイピングしていく姿は本当に誇らしいです。私たちも負けていられません!
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました!
本プロジェクトの成果物や、彼らをはじめとするデジコン学生のその他のクリエイティブな取り組みにご興味を持っていただけた方は、ぜひ当サイトの他のページや制作実績(ポートフォリオ)もご覧ください。デザインやXRを活用した社会課題解決についてのご意見・ご感想もお待ちしております!


